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zoom RSS 『半分の月がのぼる空』作者・橋本紡「廃業するかもしれない。エンタメ小説は終わった。ビジネスとしては」

<<   作成日時 : 2013/04/18 12:53   >>

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90 :とある名無しのぐるぐるさん投稿日:2013/04/18(木) 01:23:51.84 ID:oEXreSf50
僕は書くのをやめるかもしれない。廃業するかもしれない。

無題

本来、こういうのは担当してくれている編集さんにまず、伝えるべきことだ。彼女たちは(女性ばかりなのでこう書くけれど)僕に期待してくれてるし、とてもよくしてくれる。それは本当に、本当にありがたいことだ。ゆえに、自らの思いを最初に話すとしたら、彼女たちであるべきなのだろう。

ただ、告白というのは常に、とても勇気のいることなのだと思う。僕の場合、わざわざ表明すべきことでもない。ひっそりと消えていく作家なんていくらでもいる。また、数年に一冊しか出さない人もね(できれば、そういうポジションに落ち着くことができればと願っているのだけれど、よくわからない)。

作家がSNSで引退を表明するなんて、滅多にないことだろう。おもしろ半分、からかい半分でもかまわないので、いわゆる「拡散」をしてもらっていい。率直に思いを綴るので、多くの人に読んでもらおうではないか。

率直に行こう。エンタメ小説は終わった。ビジネスとしては。だいたい、三年ほど前かな。

ちゃんと書いておくけれど、芸術としての文学は意味を失っていないし、そもそも人がなにかを創るということに終わりはない。
エンタメ小説が終わったと書くのは、あくまでもビジネスに限定したことだ。
僕が知るかぎり、ここ三年ほどのあいだに出た作家の中で、大卒サラリーマン以上の年収を継続的に得られている人はわずかしかいない。いくつかの作品がヒットすることはあるし、けっこうな収入になるけれど、それが続くことは稀だ。執筆だけで人並みの生活を送ることは、もう不可能なのではないか。

五年前、十万部売れていた作品があったとしよう。今なら、よくて五万部くらいかな。三万部かもしれない。来年はもっと減る。再来年もね。三年後は……本になるかどうか、僕には確信が持てない。

今の日本では、ほぼすべての分野において、市場が縮んでいる。当たり前の話だ。人口が減っているのだから。若い人がどんどん少なくなっている。
小説もまた、その宿命から逃れることはできない。
人口減だけではなく、インターネットを初めとする、情報の多様化も要因としてあげられる。
選択肢が増えた。それはすばらしいことなのだけれど、小説というオールドメディアにとっては、厳しい現実になってしまう。

僕が抱く悲しみのひとつは、そういった状況だ。小説は以前ほど、必要とされていない。
自分の表現ができればいいと考えている作家もいるけれど、僕はそうではない。僕は読まれたい。
伝えたい。部数とは、読者の数でもある。言葉、思いが、伝わる相手の数だ。
どんどん本が読まれなくなっていく現実は、ひとりの書き手として、とてもつらいことだった。
そして、それが不可逆的な過程であることは、よくわかっていた。
耐えられず、僕は毎日、ラムを一本あけた。毎日毎日、ラムの瓶が部屋に並んでいった。
絶望という井戸は、どんなに覗き込んでも底が見えない。そして、身を乗り出しすぎれば、いつか落ちてしまう。

ただし、部数が、つまり読者が減っていくだけならば、まだ耐えられただろう。小説を書く喜びによって。天秤を思い浮かべてほしい。右側の皿に「喜び」があり、左側の皿に「絶望」がある。釣り合っていれば、なんとか続けられたのではないか。

けれど、左側の皿に、別のものが乗った。ふう。先を書くのは、気が重い。
今、この時間に、この文章を読んでくれている人の中にも、傷つく人がいるだろう。
僕はこんなことを書くべきではない。

でも書かねばならない。誰のためでもなく。僕のために。

僕は家人を得て、子供も得た。一男一女。喧嘩しながらも、苛々しながらも、悪くない日々だ。
チョコレートをたっぷり味わっている。けれど、世の中は、そうではない。
学生時代の友人たちの多くは、結婚していない。もちろん子供もいない。
公的な統計によると、日本の二十代、三十代の三割ほどは、未婚のまま生きていくそうだ。
子供を持つ人間は半分くらい。仕事柄、作家や、書店員との付きあいも多いけれど、彼らに絞ってみると、割合はさらに高くなるのではないか。
僕自身がそうだったように、本好きは人間関係があまり上手じゃない。この国、日本においては、子供を持たない人々が多数派になろうとしている。

傾向は鮮明だ。市場は嘘をつかない。現実を反映する。男女の関係を描いた小説は今、まったく売れなくなった。家族を描いた小説は今、まったく売れなくなった。大人を描いた小説は今、まったく売れなった。

繰り返すけれど、部数とは、読者の数だ。

僕は男女の小説を書きたい。家族の小説を書きたい。大人の小説を書きたい。
けれど今、それらは求められていない。以前に「よつばと」のことを取り上げたけれど、家族の形を描くとしたら、ああいう方法しかないわけだ。
男女の話ならば、性的なことはいっさい書かず、ラブコメにしてしまうとかね
夫であり、父でもある僕は、そういうやり方を選びたくない。得ることは失うことなのだと書きたい。
痛みに触れたい。僕という人間の、あるいは橋本紡という作家の、それは限界なのだ。




全文
http://nekodorobo.exblog.jp/20279928/


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